義務教育年代の英語教育の改革に向けて:現状認識

先日、ジョイズを創業して10年が経ちました。 比較的格差が少なく文化的に画一と言われる日本とその教育制度の中でも、人によって受けてきた教育は大きく異なります。 私達がジョイズ株式会社でやること、やろうとしていることを、納得感を持って理解いただくため、現状認識の共有にチャレンジしたいと思います。 日本の小・中学校、義務教育課程においては、公立学校が全体の9割超を占めます。 そのため、ここでは特に公立の特徴を、私立や塾と対比しながら述べていきます。 私立や塾などの、私費の教育機関で教育を受けてきた方や、企業組織内でバリバリ働かれている方のほうが、発見や気づきがあるかもしれません。 教育関係者には、議論が乱暴だったり、一般化しすぎている、と感じる方もいらっしゃるかもしれません。 何卒ご容赦ください。 もしくは、Xで指摘いただけると嬉しいです。 義務教育の現状認識 公立学校は生徒を選べない 公立の小・中学校では、一部の例外を除き、住所で学校が決まります。 公立学校に勤務する教員は、多様な学力、生活環境、そして行動の違いを持つ生徒が一斉に集まる中で、全ての生徒に対応することが求められるのです。 この環境自体が挑戦であり、時に困難を伴います。 個別の指導が必要な生徒や、特別な配慮を要する状況が日常的に発生しますが、その中でも教員たちは教育の質を保たなければならないのです。 これを他の職業に例えるならば、採用基準なく、ランダムに選ばれた同僚やチームメンバーとともに仕事をするようなものです。 あるいは、町内会のような団体を想像してもらうのも良いかもしれません。 入学する子どもを試験で選別したり、実力別にクラス設定ができる私立や塾とはまったく異なる環境ということができます。 公立学校は、生徒や保護者に選んでもらう努力をしなくていい 私学や塾は、生徒が集まりにくくなり、経営難になることで消滅します。 公立の小中学校は、付近の子どもの人口が極端に少なくなることで消滅します。 公立学校には、入学希望者を増やすための競争は基本的に存在しません。 入学者数を確保するために宣伝を行ったり、特別なカリキュラムを用意する必要はありません。 公立学校においては、生徒数が大きく減ったり、広く報道されるような不祥事が避けられれば、それ以上を目指すインセンティブは特にないのです。 もちろん、指導力向上のための研修や学校全体の改善活動は日々行われています。 しかしながら、制度で担保された共通のインセンティブがない以上、こうした活動の効果は、教育長、指導主事、校長、教頭、教科主任、教員それぞれの内発的向上心に大きく依拠することとなります。 その中で、一部のリーダーシップ人材が特に顕著な成果を短期間に挙げることもあります。 その場合は、公立であるにも関わらず、その学校に子どもを通わせるために引っ越しをする家庭が出てきたりします。 改革の組織的維持が難しい 教育現場の改革が、構造的に一部のリーダーシップ人材に依存していることは述べました。 公立の小・中学校の大半は、基礎自治体(市区町村)がその運営に責任を持っています。 一方で、各学校で教務を担う教員の人事は、政令市を除いては、都道府県が持っています。 業務執行の責任と人事の責任の在処が異なる、ということです。 もちろん、市区町村とその上の都道府県の教育行政はコミュニケーションをとっています。 が、先生たちは、数年ごとに別の学校、時には別市区町村の学校へと配置換えされていきます。 それぞれの学校で必要な人員を集め、長期的な目線で育てるために必要な制度的基盤は存在しません。 そのため、優秀なリーダーシップ人材によって一時的な革新がもたらされたとしても、その長期的な維持は難しく、人事によっては完全に先祖返りしてしまうこともあります。 もちろん、先端人材がさまざまな学校でその実力を発揮できる、という点では大きなメリットもあります。 教育の成果やプロセスの健全度合いが定点評価されていない リーダーシップ人材の個性を礎にした改革を継続することが制度上難しいことは述べました。 それでも、適切な成果指標を設定することで、改革とは言えないまでも、現場レベルの小さな改善を積み重ねることは可能なはずです。 しかし、こうした成果測定は行われていないに等しい、のが現状です。 成果測定らしきものが行われている場合でも、前年・他校・他自治体、との比較が極めて難しい指標となっていることが非常に多くあります。(刺激的な物言いで気分を害された方がいましたら申し訳ありません) 日々、多様な生徒たちと向き合っている先生が、生徒たちの反応を見ながら授業を改善する。 まさに職人技です。 しかし、学校、自治体、あるいは国の教育行政が組織として改革を完遂するには、道標となる客観的成果(到達)指標が必要不可欠です。 文部科学省が実施している学力テストや学習到達度評価も、国全体の大まかな評価はできますが、各学校、各教員が日々の授業運営の道標に使うためには、頻度や内容のミスマッチがあります。 数年以上に渡る一貫性、客観性、検証性、およびカリキュラムとの親和性の観点で、唯一デファクトの定点観測と言えるのが英語検定(英検)です。 ただこれも「一部の生徒が自身の判断で受けている」「受けるタイミングが統一されていない」等の理由で、共通の羅針盤として使う段階には至っていないと考えます。 新学年の準備期間がほとんどない 日本では、学年は毎年4月に始まり、3月に終わります。 その自治体の属する気候帯にもよりますが、春休みの平均は非常に短く、2週間程度しかありません。 つまり、新しい年度に向けて、新規導入予定の教材や、カリキュラムの変化に対応し、新年度への準備に使えるのが10営業日ほどしかありません。 さらに、この春休みの期間では人事が動きます。 驚きなのは、新しい配属先の学校の業務が4月1日に入らないとできない、というケースが多いこと。 この場合、新年度の準備に使えるのはわずか数営業日しかありません。 この状況において、個々の先生が年度間で教授法を変えたり、教授法の改善を組織的に行うことがどれだけ難しいか、教育関係者でなくても伝わるのではないかと思います。 余談ですが、秋スタートの諸外国においては、各学年が始まる前に1.5-3ヶ月の夏休みがあり、先生たちはこの間に新カリキュラムの分析や教材選定、模擬授業の実施、研修、学会への参加を通して新学年に備えます。 公立小・中学校の改革の難しさまとめ まとめると、義務教育の9割を占める公立小中の改革の難しさは以下のようになります。 十分に長期かつ一貫した改革インセンティブが発生しない構造になっている 尖った人材が改革に着手しても、組織的継続に繋がりにくい 信頼できるKPIがなく、改善の正当性を評価しにくい 私立や塾とは、同じ教育業界とは言っても、マクロミクロの組織構造があまりに違います。 私教育では、生徒と教育機関が互いを選び合い、校風や指導法で差別化し、模試や進学実績といった、対内外で通用する業績指標が存在します。 言うまでもなく、私教育の予算編成には大きな柔軟性があります。 公立の小中学校では、すべてが異なります。 営利と非営利の差を超えた環境の違いが横たわっています。 公立の環境では、トップが決めた方針をオペレーション(この場合、教授法)の細部に至るまで浸透させる構造がありません。共通して目指せる成果指標も存在せず、人事的なレバレッジも存在しません。 私立・塾と、公立の間で、指導ノウハウの移植が伝統的に困難な理由はここにあります。...

10月 24, 2024

メンバーの才能開花と無段階の事業拡大を実現する「オフィスレス経営」

ジョイズ株式会社では、いわゆる「フルリモート」の働き方を全社的に実行する、オフィスレス経営を採用しています。 組織強化のために採用活動をする中で、これまでリモート勤務の経験がない方からも多くの応募を頂けるようになりました。このタイミングで一度ジョイズの経営スタイルについて文章にまとめておくことで、求職者の方がベストの職場を見つける一助になれば、と考えています。 きっかけは2020年、新型コロナウイルス 他の多くの会社と同じように、ジョイズにとっても、オフィスレス経営に移行した直接のきっかけは2020年に起こった新型コロナウイルスの爆発的流行でした。 中国南部を起点に本格的な流行の兆しが見えたのが2020年の1月。日本国内への進入を受けて全国の小中学校が休校措置になったのが2月。ジョイズは当時、品川区の西五反田に最大30名ほど収容できるオフィスを借りていましたが、その年の秋には収容人数が10名を切る港区三田のオフィスに本社機能を移転し、本格的なオフィスレス経営に移行しました。 当時、ソフトウェア開発プラットフォームを手掛けるGitLabのような、オフィスを持たず、地理的に完全に分散した会社が存在することは知っていたものの、実際に実行するとなると、自社の事業や組織に合わせてゼロから考えなくてはならないことも多くありました。 これまで3年ほどオフィスレス経営を実行した経験から見えてきた事業運営上のメリットは以下の通りです。 予想通りのメリット 居住地に関係なくベストの才能を採用できる オフィス規模や、デスクのレイアウトなどの制約を受けず、無段階に組織をスケールさせられる ライフステージを問わず、各メンバーの最大パフォーマンスを発揮できる 予想外のメリット 組織全体との距離感を一定に保てる 新しいアイディアを寝かすことで、本当に今やるべきことだけに集中できる 予想通りのデメリット 社員数が少ない段階から、ピープルマネジメントに仕組みが必要になる 紙の書類のやり取りのリードタイムが1〜2週間伸びる 弊社は全国の自治体・学校向けにAIを活用した英語学習支援クラウドを展開しています。全国にある1,700余りの自治体がメインの顧客になるので、都市部を中心に活動することが物理的に難しく、一般的なB2Bの営業に比べると、移動時間が長く取られがちです。 パンデミック以降は、官公庁においても、オンラインでの商談・営業に対する抵抗感が以前より随分となくなりました。それでも、教室内での活用のしやすさをウリにしている当社の製品を学校現場に浸透させる上では、授業参観への参加や、地域の教員の研究会への参加も欠かせません。 こうした市場にオフィスを前提に対応するためには、各地方の中心部に事務所を構えなくてはいけません。事務所を設置するためには、備品や内装の先行投資はもちろん、毎年の地方税の支払いも発生します。また一般的にはあまり知られていませんが、個人で住居を借りる場合に比べると、オフィス物件は敷金が多くかかります(12ヶ月程度)。 また、その拠点の人員が1人、2人・・・と増えていくに従って、必要なオフィスのスペースも増えていき、移転の必要性も出てきます。リージャスやWeWorkなど、こうした小規模なオフィスニーズにこたえるサービスもありますが、大都市部に限られるのが現状です。各従業員の自宅を拠点にしたオフィスレス経営であれば、こうした事業拡大の摩擦を抑え、時間的にも資金的にも効率の良い拡大が可能になります。 オフィスレス経営のデメリットについても、チームビルディングに関してはメンバーが主導して週次の全社会同を運営してくれていたり、紙の書類についてはAtenaというサービスを活用するなどして、負担や歪みが偏らないように気をつけながら行っています。 全社会同もオンラインで実施しています。情報共有+ブレークアウトルームを用いてのチームビルディング、という2段階構成をとっています。これも、開催する部屋のサイズに上限がないので、社員が1,000人になっても10,000人になっても類似のフォーマットを維持し、社内のあらゆるチームとコミュニケーションをとることが可能です。会同をフレッシュに保つ企画は大変さもありますが、リーダー陣がよく話し合っていい企業文化を作ってくれている、と思っています。ジョイズはバイリンガルの会社で、英語と日本語を併記・併用する、といったコミュニケーションの難しさもありますが、そこも特色の一つとして、参加者全員が楽しんでくれているように私からは見えています。 オフィスレス組織で活躍するために必要な資質 とはいえ、オフィスレス組織が万人向けかと言われれれば、もちろんそうではありません。そもそも、パソコンと遠隔でのやり取り中心で業務が回る業態が限られますし、採用時にはメンバーの適性も考慮しなくてはいけません。 まず重要なのは、高いワーク・エシック。言い換えれば、自らを律して必要かつ正しい活動ができることです。同じオフィスで、同じゴールに向かっているメンバーと空間を共有して働く、という環境の力を借りて初めて高いパフォーマンスを実現できる、という方には、あまり向かないかもしれません。逆に、社会的圧力や感情の力を使わずに努力ができる方であれば、オフィスレスの環境によって本当の実力が開花することでしょう。 また、文章で的確にコミュニケーションが取れることも必要です。Slack等のメッセージツールを使ったコミュニケーションだけでなく、Notion等のツールを用いた業務データのデータベース化や、定型業務のマニュアル化を駆使しながら、隣で手取り足取り見せる・見せてもらうことをしなくても業務が遂行できる環境を作る、といったことを全社的に実施しています。ジョイズは、従業員規模に対して社内のドキュメントの数や充実度はかなり高い方なのではないかと思います。 どのライフステージでも活躍できる場を目指して 個人的には、オフィスレス経営に移行して数ヶ月後に双子の娘が産まれたことも、経営判断に大きな影響を与えました。社長の私的都合で会社全体の制度を変える、といった私物化はもちろんあってはならないことですが、それと同時に、自分に課せられた公私の責任を果たしつつ、外部から資金調達した会社の価値、何より世界の英語教育への貢献度の最大化を目指す。何も諦めたくないし、誰にも言い訳はしたくない。 オフィスレス経営は、そうした欲張りな人たちにとって一つの正解なのはないか、と感じています。 ジョイズでは、公教育向けの事業成長に伴い、様々なポジションで採用を進めています。会社のミッションや働き方、文化に共感いただけた方は、ぜひ一度お話しさせてください。

10月 27, 2023

TerraTalk、京都市も導入です

ジョイズ、京都市内教員の英語力向上機会として「TearraTalk」を提供 京都市は、教育長を経験した市長がここ数十年続いている、特色のある自治体です。今回ご一緒できることを誇りに思います。 プレスリリースからのコメント抜粋 「今回のTerraTalkの導入は、教育テクノロジー=EdTechと教職員の能力開発を融合させる画期的な試みだと感じています。このようなパートナーシップが、日本全体の教育改革における新たな道筋を示すことを期待しています。」

8月 1, 2023

私たちはなぜスタートアップの戦略市場として義務教育を選んだのか

ジョイズ株式会社は、主に公教育、特に自治体向けに、クラウドベースの英語学習支援ソフトウェアを提供しているスタートアップです。いわゆるEdTechに相当し、しかも自治体向けが多い、B2G的な企業ということで、比較的珍しい事業をやっているのではないかと思います。 「教育なんて体質が古そうだし、自治体は意思決定が遅いし、そもそも生産人口減でお金がない。全然スケールしなさそう!」 と思ったそこのあなた。You are not alone. 一般的には、事業領域・投資領域としてのEdTechに対する世間の評価は必ずしも高くない、と思われます。教育事業は意義が明確で、やりたい人が多い。英語学習も、目新しい事業モデルはすぐに競合を呼び、マーケティング費用が先行するレッドオーシャン状態になる。ベネッセや学研などの大企業も存在するが、直近の事業の伸びは教育ではなく介護事業。たまに来る教育系の新規株式公開も、正直言ってパッとしない・・・。これを読んでいるあなたも、そんな印象を持っているかもしれません。 一方で、ジョイズの事業には今、100以上の自治体での実績を産むモメンタムがあり、直近で資金調達を完了した、という事実もあります。 この記事では、私たちジョイズ株式会社が、なぜスタートアップの戦略市場として義務教育を選んだのかについて書いていきます。 スタートアップの市場選択 外部からイクイティを集めて経営するスタートアップにおいて、まず第一に求められるのは高い成長性です。継続的かつ高い成長性があって初めて、その株式は高く評価され、投資家の資金投下が正当化されることになるからです。 その観点で考えると「古い・遅い・お金ない」が揃っている印象のある自治体向け市場は、一見検討する価値のほとんどない、スピーディな事業成長が極めて難しい市場に見えます。ここで必要なのは、市場をより細分化して捉えることです。 細かく見るとお金はある 自治体が管轄する事業のうち、教育、さらに細分化して、英語に着目すると、長期的には「お金を機動的に支出する」傾向にあります。これはどういうことか。 キーワードは「専科教員」と「外国人指導助手(以下ALT)」です。 日本における英語教育は、長らく「若年化」と「高度化」の流れにあります。これを書いている時点において、日本の子供は、小学校3年生から英語の学習を始めます。一部の自治体には小学校1年生でスタートするところもあります。小学5年生からは教科化し本格的な学習が始まります。また、旧来の翻訳文法を中心に据えた学習から、スピーキングを含む運用性を優先したカリキュラムに変わっています。つまり英語教育は、量的(時数)にも質的(内容、難易度)の面でも変化を遂げてきています。 この変化を支えるため、教育学部のカリキュラムの進化とともに、必要なスキルを持った人材を従来とは違う形で現場に派遣する、といったことが行われてきています。広義には、義務教育におけるオンライン英会話の活用もここに含まれるでしょう。 意外と知られていないのですが、この学校現場における英語専門人材の市場は、リンクアンドモチベーショングループの基幹事業の一つだったり、みなさんご存知のオンライン英会話「レアジョブグループ」がM&Aを通してアプローチを開始した事業だったりします。総じて1,000億円〜2,000億円程度の機動的予算が国内にある、と理解いただけばOKです。 これは、他の主要教科(国語、数学、理科、社会)にはないものです。この英語に加えて、情報教育全般が、近年の日本における教育の漸進的改革の中心です。実際に文科省にもこの2つを統合的に管掌する課があったりします。 言いたいことは何かというと、公共領域においても、大事なところには投資がちゃんとされている。顧客の投資ニーズに沿ったものであれば十分にチャンスがある、ということです。 個々は遅いが市場は早い 確かに、4月〜3月の公会計年度と議会の会期に縛られる自治体の予算を動かすには、通常のB2B事業より平均では時間がかかりやすいのは事実かもしれません。一方で、義務教育の領域には、他の領域にはない特殊性があります。それは市場の均質性です。 日本の学校は、どこに行っても大体一緒です。 こんなことを言うと、学校現場の皆様には怒られてしまうかもしれません。もちろん、自治体による差は歴然とあります。学校間の差もあります。それは各組織の構成員の長年にわたる努力によるもの。それを無視することはできません。 しかしながら、生徒を入試で選抜している私学・高校以降の教育機関、クラスのサイズから指導法まで幅広い塾・家庭教師などの事業者間の差異と比べると、義務教育は総じて均質です。各科目の時数は基準が決まっている。教科書もわずか6社から選択するようになっている。クラスの規模の上限も決まっています。 自由競争の市場においては、マーケット内のポジションを確立するため、様々な差別化が必要になり、これが選抜や業態の差として現れます。一方、義務教育におけるポジショニングはまさしく地図上の位置=学区にある。カリキュラムや指導方法の面でも、国から強力なガイドライン=学習指導要領が出ている。 生徒の学力分布や指導方法が概ね似ているということは、そこにある教育課題も概ね似ているということです。 課題が似ているのであれば、解決方法も似てくるはず。つまり、一度プロダクト・マーケット・フィット(PMF)をすれば、その後の事業シェア拡大は第一にセールス&マーケティング駆動になる、ということ。製品の多角化や、市場内のニーズのグラデーションへの段階的対応といった、継続的PMFが必須の市場に比べると、難易度はグッと下がります。個々の顧客の営業リードタイムは決して短くないけれど、市場のペネトレーション速度(イノベーターを抜けてからラガードに到達するまでの年数)は短い。そんな市場です。 その分(?)PMFまでは結構大変なのですが・・・当社はここはクリアできているのかなと思っています。自治体規模も、小中1校ずつ、といったところから、政令市まで幅広いレンジで実績があります。 ちなみに、セールス&マーケティング駆動になっているシェア拡大ですが、ここも加速における戦略の要石と言える施策が一つあります。ここまでの文章にヒントがあるので、分かった人はこっそりDMをください。ぜひ一緒に働きましょう。 古いのではなく、圧倒的に強い さて、最後の「教育現場は古い」というイメージについて。私たちの考え方はこうです。学校は古いのではなく、圧倒的に強い。だから変わっていないように見えるのだ。 学校、特に義務教育は、引越しや、深刻な不幸がない限り、基本的に生徒がやめません。また、近年不登校の割合の増加が問題になってはいるものの、生徒の登校率、授業の出席率も、ビジネスの世界からすると羨むしかない数字が並びます。 ほとんどの公立校は、集客のために校舎の外壁を塗り替える必要がありません。学校の周りが開発されたり、寿命を迎えた住居が建て替えられていっても、10年前と同じようにそこに佇んでいます。それでも、エアコンの配備率は上がっているし、WiFiも通っているし、2021年からは、児童生徒が一人一台のパソコンまたはタブレットを貸与されるようになっている。ビジネスの世界では当たり前のインフラですが、こうした装備が行き渡った現在、最も大胆かつ広範な教育改革ができるのは、生徒のチャーンを心配しなくていい学校に他ありません。 B2Bの世界であれば、業界のナンバーワン企業に導入を目指すものだと思います。義務教育市場では、個々の自治体・学校が、こうした業界ナンバーワン企業と同等の安定性を誇ります。この圧倒的な強さは、多少の困難にめげずに長期的な改革を実行できることに繋がり、ビジネスの面では、継続率の高さに繋がります。 ジョイズのいま こうして書いてきましたが、私たちはまだまだ道の途上。約束されたものは何もありません。現状で100を超えた自治体導入を、中期的には市場の過半を獲得することで、業界のデファクトスタンダードになることを目指しています。それには、既存の自治体での活用の深化、導入対象の学校・学年の拡大、何より、それぞれの現場の教育ビジョンの実現が前提条件になります。この道のりを、徹底した現場理解に基づく製品・サービスの進化と、教育活動の科学化を通して実現するのが私たちのミッションです。 この記事を読んで、少しでも「面白そう」「自分の仕事のチャレンジとして、燃えられそう」と思った方。英語学習、国際化推進に思いのある方。お友達、お知り合いにそんな方がいる方。ジョイズは直近で資金調達を完了し、更なる事業成長のため、様々なポジションで採用をしています。ここには書けないことも含めて、色々お話ししましょう。 ジョイズ株式会社 採用ページ https://open.talentio.com/r/1/c/joyz/homes/2229

6月 20, 2023

英語教育のデファクトを目指して:ジョイズのプロダクトと戦略

まえがき こんにちは。ジョイズ創業者の柿原です。 ジョイズは、英語習得の民主化を目指しているアーリーステージのスタートアップです。 今日、世界の英語学習者の数は10億人とも15億人とも言われます。一方で、ネイティブ教師の数は25万人、生徒4,000人に対して1人程度と見積もられています。学問・通商の共通語になっている英語に関する、この圧倒的な需給のギャップをテクノロジーで乗り越えることで、よりフラットで開かれた社会をつくる。これが私たちのミッションです。 日本国内におけるジョイズの注力領域は、英語関連市場の中でも、英語を教えることを本業としている教育機関向けです。これには、学校から塾、英会話スクール、社会人向けのマンツーマン事業者などが含まれます。 中でも、中長期的な戦略領域として設定しているのが義務教育です。 義務教育の今と、私たちのプロダクト 現在の日本の義務教育は、生徒が一人一台タブレット等のデジタル端末を持ち運ぶ環境に加え、小学校3年生から英語が始まるなど、今の20代〜30代が経験してきた教育から大きく変容を遂げています。また、全科目の中で英語が先行してデジタル教科書の配備が進むなど、IT活用と英語教育はいまや、日本の教育の二大テーマということができます。 そのど真ん中にあるのが、ジョイズが提供する、AI英語学習クラウドのTerraTalk(テラトーク)です。 TerraTalkは「読む・書く・聞く・話す」を全体的にカバーしつつ、とりわけ「話す」に大きな特徴を持ったサービスです。音声チャットボットや、発音採点機能を取り入れることで、まるでマンツーマンの指導を受けているかのような体験を、全国の教室に届けています。 TerraTalkを開発する中では、現場ニーズの吸い上げにこだわっています。学校の年度と年度の間の春休みが極めて短く、かつ人事が動くため、年度間に大きな改革を仕込むのが難しい、これが日本の教育現場の事実です。そのため、学習法・教授法の理想系や、特定のメソッドを定義してから一気に落とし込むアプローチではなく、先生が授業ですでにやっていることをグレードアップさせ、そこを起点に、長期的目線で教え方を変える、という思想でプロダクト設計をしています。 この一例として、TerraTalkでは、小中学校で使われる検定教科書の出版社全6社と提携し、準拠教材を共同開発・提供しています。教科書は、義務教育の質の担保の一翼を担う重要な標準教材であり、大多数の先生の授業運営の拠り所になっています。昔ながらの教科書に技術を加えることで、音読や単語学習、文法問題などの、単調になりがちな活動をより楽しくインタラクティブに。応用学習としてAIとの会話を提供することで、英語の活用機会を、生徒や先生のスキルに依存しない形で実現しています。 スケールを支えるモダンな組織文化 デジタル・トランスフォーメーションの波は、顧客(学校)の現場だけではなく、私たち事業者側のオペレーションにもきています。セールス面では『The Model』を応用したオンライン中心かつ分業モデルを確立しています。移動時間を圧縮しつつ、顧客自治体の規模の大小を問わず密着型の顧客対応が可能です。 また、公教育向けにおいては、大規模導入・契約前の実証事業の成功が受注の成否を分けます。税金の使い途としての妥当性を、教育行政のあらゆるステークホルダーに対して説明可能にするためには、現場での実活用を通した有用性の証明をすることが王道です。こうした運用支援は、ビジネス向けソフトウェアの領域では『カスタマー・サクセス』と呼ばれ、成約後の継続率最大化をミッションにした組織として運営されることが一般的です。 ジョイズでは、成約前の運用支援の必要性から、このチームを「Teaching Transformation(教授法改革)」と名付け、成約前から成約後まで一貫した方法論で、顧客の現場の授業の変革を強力に支援しています。 テクノロジー面では、2022年から急速に進展・普及が進む生成AIの投入も予定しています。これについてはまた別の記事で詳しく語ることができればと思います。特にGPT-4の性能は英語教育の多くの領域でゲームチェンジャーになることが想定され、2020年代中に、オンライン英会話のような人的サービスを品質・価格の両面で大きく引き離していくことになります。 ジョイズと、教育と、社会のこれから これからの数年で、私たちはまず、日本の義務教育年代における最重要テクノロジーの1つとして、教員、生徒、保護者などのステークホルダーから支持されるサービスを確立していきます。近年では、「教える」以外の先生の業務を大きく改善するツールや、IT・プログラミング等の、現代に必要な実学をサポートする製品、マルチメディアを活用した創造性ツールなど、素晴らしい製品が多く市場に登場し始めています。そんな中、TerraTalkは2023年4月時点で100以上の自治体で活用が始まっており、この領域のリーダー企業の一つになりつつあります。 見据えているのは、小・中・高と真面目に学校に通うことで、国内外の様々な選択肢から進学・就労の選択肢を選べるようになる世界です。 今でも、駅前には英語塾や英会話の教室が数多くあり、社会人になってから必要に駆られて英語を学び直す人がたくさんいます。10代のうちに基礎が確立していれば、そうした勉強時間を自らの専門性の向上や、家族・友人との時間に充てやすくなるでしょう。 外国語は、若いうちの方が覚えるのが楽です。大人になってからももちろん上達はしますが、より大きな努力が必要となり、また発音や文法の習得においては、一定以上の水準に到達するのが基本的に不可能になります。その観点ではスポーツに似ています。スポーツと違う点があるとすれば、英語は、仕事にも、勉強にも、旅行にも活かすことができ、人生の可能性をあらゆるところで広げてくれることです。 さらに、英語習得の民主化は、英語を学ぶ個々人だけにとどまらず、社会全体に新しい選択肢をもたらします。高校生年代での英語力の劇的向上は、日本の大学の国際化を大きく後押しすることになるでしょう。教員側にも生徒側にも日本語が必須でなくなれば、英語ネイティブ圏の外からも様々な人材を獲得しやすくなっていきます。この変化は、産業界全体に時間差で広がっていきます。 個人的には、この選択肢を持てるかどうかで、私たちの子供や孫の世代、21世紀後半の社会や経済のあり方が大きく変わってくるだろうと考えています。 社会基盤と、歴史の地層をつくるチャレンジ 非常に大きなチャレンジですが、これを成し遂げるためには、長期的に渡り、最大限の速度で、一貫性を持った技術開発と社会実装が必要です。これには、事業としての利益創出力と成長力が不可欠な基盤となります。そして、その基盤を作るのは、技術・ビジネスの各領域において専門性を持ちつつ、隣接領域と統合をできる越境人材からなる組織です。CEOとしての私の最大のミッションは、この組織をつくることにあります。 ジョイズ株式会社は、直近で資金調達を完了し、さまざまなポジションで採用を進めています。 この記事の内容にピンと来た方はぜひ一度、お話をさせてください。

5月 23, 2023

ジョイズ、増資しました。

教育機関向けAI英語学習クラウドのジョイズ、第三者割当増資による資金調達を実施。 今回は新たにニッセイ・キャピタルに資本参加いただきました。創業以来の総額調達額は9億円ほどとなりました。 公開情報にもある通り、採用自治体が100を突破し、事業は順調に推移しています。

4月 10, 2023

山口県山陽小野田市

山陽小野田市教育委員会とジョイズ株式会社、市内の公立小中学校に、教育機関向け英語学習クラウド「TerraTalk」を全面導入したことを発表 TerraTalkが全面導入となりました。 山陽小野田市の担当教職員の皆様、これからよろしくお願いいたします。 こういった大きな取り組みが、営業組織に全面的に任せることで形になるようになってきました。個人的にも刺激を受けた導入となりました。

8月 4, 2022

スタディプラス社のイベントで登壇します。

スタディプラス社×デジタル教材会社14社が共同開催する、EdTechオンライン展示会参加エントリー開始! 塾や学校関係者の方で、ご都合つく方はぜひご参加ください。 英語四技能部門 11月4日(木) 13:00 - 14:00 TerraTalk:「英会話アプリ『TerraTalk』を活用した教室運営」 登壇者:ジョイズ株式会社 柿原 祥之 教材対象学年:小学生・中学生・高校生 スタディプラスの皆様、宮坂さん、貴重な機会をいただきありがとうございます。

10月 13, 2021

ワールドビジネスサテライトに出演しました

テレビ東京のワールドビジネスサテライトに、英会話アプリ「テラトーク」の運営元代表として出演しました。 お忙しい中、教室をお貸しいただいた湘南ゼミナール様、ありがとうございました。 ニュース取材ロケは初めてでしたが、スタッフの皆様の手際が素晴らしかったです。また古巣のソニーの放送向け機材がたくさん使われているのも個人的には一押しポイントでした。

5月 18, 2019

キャナル・ベンチャーズから取材を受けました。

CareerWake - AI英会話アプリ「TerraTalk」を、全世界に展開していきたい ジョイズ株式会社の株主であるキャナル・ベンチャーズ様に記事を書いていただきました。

3月 17, 2019