メンバーの才能開花と無段階の事業拡大を実現する「オフィスレス経営」

ジョイズ株式会社では、いわゆる「フルリモート」の働き方を全社的に実行する、オフィスレス経営を採用しています。 組織強化のために採用活動をする中で、これまでリモート勤務の経験がない方からも多くの応募を頂けるようになりました。このタイミングで一度ジョイズの経営スタイルについて文章にまとめておくことで、求職者の方がベストの職場を見つける一助になれば、と考えています。 きっかけは2020年、新型コロナウイルス 他の多くの会社と同じように、ジョイズにとっても、オフィスレス経営に移行した直接のきっかけは2020年に起こった新型コロナウイルスの爆発的流行でした。 中国南部を起点に本格的な流行の兆しが見えたのが2020年の1月。日本国内への進入を受けて全国の小中学校が休校措置になったのが2月。ジョイズは当時、品川区の西五反田に最大30名ほど収容できるオフィスを借りていましたが、その年の秋には収容人数が10名を切る港区三田のオフィスに本社機能を移転し、本格的なオフィスレス経営に移行しました。 当時、ソフトウェア開発プラットフォームを手掛けるGitLabのような、オフィスを持たず、地理的に完全に分散した会社が存在することは知っていたものの、実際に実行するとなると、自社の事業や組織に合わせてゼロから考えなくてはならないことも多くありました。 これまで3年ほどオフィスレス経営を実行した経験から見えてきた事業運営上のメリットは以下の通りです。 予想通りのメリット 居住地に関係なくベストの才能を採用できる オフィス規模や、デスクのレイアウトなどの制約を受けず、無段階に組織をスケールさせられる ライフステージを問わず、各メンバーの最大パフォーマンスを発揮できる 予想外のメリット 組織全体との距離感を一定に保てる 新しいアイディアを寝かすことで、本当に今やるべきことだけに集中できる 予想通りのデメリット 社員数が少ない段階から、ピープルマネジメントに仕組みが必要になる 紙の書類のやり取りのリードタイムが1〜2週間伸びる 弊社は全国の自治体・学校向けにAIを活用した英語学習支援クラウドを展開しています。全国にある1,700余りの自治体がメインの顧客になるので、都市部を中心に活動することが物理的に難しく、一般的なB2Bの営業に比べると、移動時間が長く取られがちです。 パンデミック以降は、官公庁においても、オンラインでの商談・営業に対する抵抗感が以前より随分となくなりました。それでも、教室内での活用のしやすさをウリにしている当社の製品を学校現場に浸透させる上では、授業参観への参加や、地域の教員の研究会への参加も欠かせません。 こうした市場にオフィスを前提に対応するためには、各地方の中心部に事務所を構えなくてはいけません。事務所を設置するためには、備品や内装の先行投資はもちろん、毎年の地方税の支払いも発生します。また一般的にはあまり知られていませんが、個人で住居を借りる場合に比べると、オフィス物件は敷金が多くかかります(12ヶ月程度)。 また、その拠点の人員が1人、2人・・・と増えていくに従って、必要なオフィスのスペースも増えていき、移転の必要性も出てきます。リージャスやWeWorkなど、こうした小規模なオフィスニーズにこたえるサービスもありますが、大都市部に限られるのが現状です。各従業員の自宅を拠点にしたオフィスレス経営であれば、こうした事業拡大の摩擦を抑え、時間的にも資金的にも効率の良い拡大が可能になります。 オフィスレス経営のデメリットについても、チームビルディングに関してはメンバーが主導して週次の全社会同を運営してくれていたり、紙の書類についてはAtenaというサービスを活用するなどして、負担や歪みが偏らないように気をつけながら行っています。 全社会同もオンラインで実施しています。情報共有+ブレークアウトルームを用いてのチームビルディング、という2段階構成をとっています。これも、開催する部屋のサイズに上限がないので、社員が1,000人になっても10,000人になっても類似のフォーマットを維持し、社内のあらゆるチームとコミュニケーションをとることが可能です。会同をフレッシュに保つ企画は大変さもありますが、リーダー陣がよく話し合っていい企業文化を作ってくれている、と思っています。ジョイズはバイリンガルの会社で、英語と日本語を併記・併用する、といったコミュニケーションの難しさもありますが、そこも特色の一つとして、参加者全員が楽しんでくれているように私からは見えています。 オフィスレス組織で活躍するために必要な資質 とはいえ、オフィスレス組織が万人向けかと言われれれば、もちろんそうではありません。そもそも、パソコンと遠隔でのやり取り中心で業務が回る業態が限られますし、採用時にはメンバーの適性も考慮しなくてはいけません。 まず重要なのは、高いワーク・エシック。言い換えれば、自らを律して必要かつ正しい活動ができることです。同じオフィスで、同じゴールに向かっているメンバーと空間を共有して働く、という環境の力を借りて初めて高いパフォーマンスを実現できる、という方には、あまり向かないかもしれません。逆に、社会的圧力や感情の力を使わずに努力ができる方であれば、オフィスレスの環境によって本当の実力が開花することでしょう。 また、文章で的確にコミュニケーションが取れることも必要です。Slack等のメッセージツールを使ったコミュニケーションだけでなく、Notion等のツールを用いた業務データのデータベース化や、定型業務のマニュアル化を駆使しながら、隣で手取り足取り見せる・見せてもらうことをしなくても業務が遂行できる環境を作る、といったことを全社的に実施しています。ジョイズは、従業員規模に対して社内のドキュメントの数や充実度はかなり高い方なのではないかと思います。 どのライフステージでも活躍できる場を目指して 個人的には、オフィスレス経営に移行して数ヶ月後に双子の娘が産まれたことも、経営判断に大きな影響を与えました。社長の私的都合で会社全体の制度を変える、といった私物化はもちろんあってはならないことですが、それと同時に、自分に課せられた公私の責任を果たしつつ、外部から資金調達した会社の価値、何より世界の英語教育への貢献度の最大化を目指す。何も諦めたくないし、誰にも言い訳はしたくない。 オフィスレス経営は、そうした欲張りな人たちにとって一つの正解なのはないか、と感じています。 ジョイズでは、公教育向けの事業成長に伴い、様々なポジションで採用を進めています。会社のミッションや働き方、文化に共感いただけた方は、ぜひ一度お話しさせてください。

10月 27, 2023

エンジニア採用に必要な4つの軸

ソフトウェアの会社やっているとつくづく思いますが、エンジニア採用って難しいですよね。会社にとってのタイミング、相性、スキルなど、考えなくてはいけないことがとても多い。僕自身も常に悩みながら取り組んでいるのですが、最近、社外の経営者の集まりなどで採用のやり方について聞かれることが増えてきたので、一度考えを整理してみたいと思います。 どんな人が欲しいのかをまず決める 採用活動はマーケティングであり、実務の内容は営業活動に似ています。ターゲットを決めないマーケティングが成功することはほとんどないですね。ダイレクトリクルーティングがいい、このメディアがいい、などなど、ついノウハウから入ってしまいがちですが、そこはぐっとこらえる。ゴールから目をそらしてしまったらPDCAを回すことは不可能です。ターゲットを決めましょう。 この「どんな人を採用するべきか?」という問いに対して巷でよく聞くのが「事業のビジョンに共感する人」「必要であれば何でもできる人」という答え。これは確かにそうなんですが、もう少し考えを深めておいたほうがより良い採用のチャンスが広がるんじゃないか、とも思っています。 では、どうやって考えていくのが良いのか。ひとつの事例として、僕が実際にとっている手法を紹介します。 課題リストをつくる まず、事業や組織がいま直面している、あるいは近い将来に相対するであろう課題、解くべき問題を書き出していきます。ここではエンジニアの採用ですので、主に技術的な内容になります。課題の内容と解決に必要なスキルは1対1で対応することが多いので、ついでに書き出しておくと、後のステップが楽になります。 例えば、 APIのレスポンスタイムを確保するためにDjangoアプリ内のクエリを最適化したい 自然言語処理系のスループットを確保するためにマイクロサービス化の標準フレームワークを構築したい 社内オペレーションのQCDを保つために、業務フローの分析と業務ツール改善施策をまとめ、設計・実装に落とし込みたい といった塩梅です。 課題の書き出しを一通り終えたとき、おそらくあなたの前にはかなりの数の項目が並んでいるはずです。すべてを満たす人を見つけるのはまず間違いなく無理でしょう。だからこそ、冒頭で述べた「必要であれば何でもできる人」が重宝されるんですね。 しかしながら、採用の成功は、採用した人の入社後の活躍度合いで決まることも事実。得意ではないことを延々とやらせるのは誰にとっても幸せになりません。ここでもうひと踏ん張りして、どうにか採用のマッチング精度を上げる方法を考えたいと思います。 課題/スキルリストに評価軸をつけていく 書き出した課題に対する優先順位のつけかたは色々あると思うのですが、僕は以下の4軸を使っています。 事業にとって重要度がどのぐらいか 事業にとって緊急度がどのぐらいか 人材市場において、その課題解決スキルはどのぐらい希少か その課題解決スキルの習得コストは何か 1と2は、品質管理の現場で、バグの優先順位を決めるのに使うマトリクスの2軸に似ています。エンジニアの人は知っている人も多いと思います。この場合の重要度は、事業のポジショニングや参入障壁を築くために資するか、その課題解決能力に資産性はあるのか、という視点で判断します。 この2軸は例えば、重要度が比較的低いが緊急度が高い課題に対しては、外注やコンサルをうまく使えば良いかも、といった、調達チャネルの判断に使います。 3は主に、その課題解決スキルを持つ人間を獲得するのにどれぐらいの時間と労力がかかるか、というところに効いてきます。希少性が高いスキルを持っている人というのは、年収相場うんぬんの前にそもそもなかなか見つかりません。希少性が高いスキルの掛け合わせというのは望まないほうが吉ですし、この意味で「必要であれば何でもできる人」を求めるのは無謀といえます。逆に、希少性が高く重要度も高いスキルを持つ人に出会った場合は、絶対に逃してはいけない、というスイッチが入らないといけません。 4は、入社後の育成可能性をきちんと評価するために使います。習得コストは「フルタイムで◯◯週間」というように時間軸で書いていきます。スタートアップは常に時間との戦いですので、ここに気を配るのは重要です。チャレンジ精神、マインドセットは確かに大事ですが、習得コストは意欲だけではなかなか下がりません。 希少性が高くても、習得コストがそこまででもない、というケースもあるので、そういう場合は思い切って育成・成長戦略に舵を切るのもアリ、と思います。その場合、採用面接でチェックするのは習得期間に大きな影響を与える「素養」に絞ります。 こうやって評価軸でブレークダウンしていくことで、事業やチームの特性があぶり出されますので、シンプル過ぎるアドバイスに惑わされることが少なくなります。 定点観測で見る目を養う 「重要度」「緊急度」「希少性」「習得コスト」の4軸ですが、これを正確に見切るのはなかなか難しいです。前の2軸は日頃の経営の延長とも言えますが、後の2軸はより社外に目を向けざるをえません。 僕自身は、定点観測のアプローチをとるようにしています。 まず「希少性」に関しては、懇親会ありの勉強会に出たり、ダイレクトリクルーティング系のデータベースをいくつか契約して眺めていると肌感覚がつかめてきます。また「習得コスト」に関しては、手を動かす系の勉強会に実際に参加してみるとこれもまた感覚がつかめてきます。ソフトウェアの分野に関しては、ライブラリやミドルウェアの発達により一気に敷居が下がることもあるので、そのあたりの潮目の変化は見逃さないようにしたい。するとやはり、定点観測しかありません。

10月 19, 2016