エンジニア採用に必要な4つの軸

ソフトウェアの会社やっているとつくづく思いますが、エンジニア採用って難しいですよね。会社にとってのタイミング、相性、スキルなど、考えなくてはいけないことがとても多い。僕自身も常に悩みながら取り組んでいるのですが、最近、社外の経営者の集まりなどで採用のやり方について聞かれることが増えてきたので、一度考えを整理してみたいと思います。 どんな人が欲しいのかをまず決める 採用活動はマーケティングであり、実務の内容は営業活動に似ています。ターゲットを決めないマーケティングが成功することはほとんどないですね。ダイレクトリクルーティングがいい、このメディアがいい、などなど、ついノウハウから入ってしまいがちですが、そこはぐっとこらえる。ゴールから目をそらしてしまったらPDCAを回すことは不可能です。ターゲットを決めましょう。 この「どんな人を採用するべきか?」という問いに対して巷でよく聞くのが「事業のビジョンに共感する人」「必要であれば何でもできる人」という答え。これは確かにそうなんですが、もう少し考えを深めておいたほうがより良い採用のチャンスが広がるんじゃないか、とも思っています。 では、どうやって考えていくのが良いのか。ひとつの事例として、僕が実際にとっている手法を紹介します。 課題リストをつくる まず、事業や組織がいま直面している、あるいは近い将来に相対するであろう課題、解くべき問題を書き出していきます。ここではエンジニアの採用ですので、主に技術的な内容になります。課題の内容と解決に必要なスキルは1対1で対応することが多いので、ついでに書き出しておくと、後のステップが楽になります。 例えば、 APIのレスポンスタイムを確保するためにDjangoアプリ内のクエリを最適化したい 自然言語処理系のスループットを確保するためにマイクロサービス化の標準フレームワークを構築したい 社内オペレーションのQCDを保つために、業務フローの分析と業務ツール改善施策をまとめ、設計・実装に落とし込みたい といった塩梅です。 課題の書き出しを一通り終えたとき、おそらくあなたの前にはかなりの数の項目が並んでいるはずです。すべてを満たす人を見つけるのはまず間違いなく無理でしょう。だからこそ、冒頭で述べた「必要であれば何でもできる人」が重宝されるんですね。 しかしながら、採用の成功は、採用した人の入社後の活躍度合いで決まることも事実。得意ではないことを延々とやらせるのは誰にとっても幸せになりません。ここでもうひと踏ん張りして、どうにか採用のマッチング精度を上げる方法を考えたいと思います。 課題/スキルリストに評価軸をつけていく 書き出した課題に対する優先順位のつけかたは色々あると思うのですが、僕は以下の4軸を使っています。 事業にとって重要度がどのぐらいか 事業にとって緊急度がどのぐらいか 人材市場において、その課題解決スキルはどのぐらい希少か その課題解決スキルの習得コストは何か 1と2は、品質管理の現場で、バグの優先順位を決めるのに使うマトリクスの2軸に似ています。エンジニアの人は知っている人も多いと思います。この場合の重要度は、事業のポジショニングや参入障壁を築くために資するか、その課題解決能力に資産性はあるのか、という視点で判断します。 この2軸は例えば、重要度が比較的低いが緊急度が高い課題に対しては、外注やコンサルをうまく使えば良いかも、といった、調達チャネルの判断に使います。 3は主に、その課題解決スキルを持つ人間を獲得するのにどれぐらいの時間と労力がかかるか、というところに効いてきます。希少性が高いスキルを持っている人というのは、年収相場うんぬんの前にそもそもなかなか見つかりません。希少性が高いスキルの掛け合わせというのは望まないほうが吉ですし、この意味で「必要であれば何でもできる人」を求めるのは無謀といえます。逆に、希少性が高く重要度も高いスキルを持つ人に出会った場合は、絶対に逃してはいけない、というスイッチが入らないといけません。 4は、入社後の育成可能性をきちんと評価するために使います。習得コストは「フルタイムで◯◯週間」というように時間軸で書いていきます。スタートアップは常に時間との戦いですので、ここに気を配るのは重要です。チャレンジ精神、マインドセットは確かに大事ですが、習得コストは意欲だけではなかなか下がりません。 希少性が高くても、習得コストがそこまででもない、というケースもあるので、そういう場合は思い切って育成・成長戦略に舵を切るのもアリ、と思います。その場合、採用面接でチェックするのは習得期間に大きな影響を与える「素養」に絞ります。 こうやって評価軸でブレークダウンしていくことで、事業やチームの特性があぶり出されますので、シンプル過ぎるアドバイスに惑わされることが少なくなります。 定点観測で見る目を養う 「重要度」「緊急度」「希少性」「習得コスト」の4軸ですが、これを正確に見切るのはなかなか難しいです。前の2軸は日頃の経営の延長とも言えますが、後の2軸はより社外に目を向けざるをえません。 僕自身は、定点観測のアプローチをとるようにしています。 まず「希少性」に関しては、懇親会ありの勉強会に出たり、ダイレクトリクルーティング系のデータベースをいくつか契約して眺めていると肌感覚がつかめてきます。また「習得コスト」に関しては、手を動かす系の勉強会に実際に参加してみるとこれもまた感覚がつかめてきます。ソフトウェアの分野に関しては、ライブラリやミドルウェアの発達により一気に敷居が下がることもあるので、そのあたりの潮目の変化は見逃さないようにしたい。するとやはり、定点観測しかありません。

10月 19, 2016

資金調達をしました。

ジョイズ株式会社、 AI 英会話アプリ「TerraTalk」のAndroid版をリリース。第三者割当増資による 1.5 億円の資金調達を実施。 インキュベイトファンドを引受先とする総額 1.5 億円の第三者割当増資を実施しました。同時にAI英会話アプリ「TerraTalk(テラトーク)」のベータ版提供を開始いたしました。 会社を登記・創業してから1年半ほど経ち、ようやくスタートラインに立った気持ちです。 英語学習の民主化を共に進める仲間を募集しています。 ジョイズ株式会社 採用情報 https://www.joyz.co.jp/hiring

2月 23, 2016

ソニーを退職し、起業します

誰が見ているかもわからないブログですが、少しだけ振り返ります。 イギリスの大学を卒業した後、新卒枠でソニー株式会社に入社して、4年半の在籍となりました。最初の3年は海外向けのカーステレオ事業で製品開発、次の1年半は研究開発部門の「ビジネスデザイン・イノベーションラボラトリ」に所属して新規事業創出に挑戦させて頂きました。 カーステレオ事業では、当時急速にシェアが広がっていたスマートフォンとカーステレオの連携を担う新機能を担当しました。自らソースコードを書くところから、海外の開発パートナーとの折衝及び管理まで経験できたのは大きな糧になったと思います。また、この開発の流れで、MirrorLinkという技術の標準化団体に技術代表として参加して、仕様の議論や策定に携わることができました。 MirrorLinkは、USBを介してスマートフォンの画面をカーステレオ(カーナビ)に伝送・投影し、逆にステレオ側のタッチをスマートフォンに送ることで遠隔操作を可能にする、というものです。 Google Maps をはじめとした、インターネット常時接続ならではの便利さをそのまま車に持ち込みつつ、車側の安全自主規制、例えば車が動いている間のタッチ操作の遮断などを反映することができる、運転者、それ以外の通行者、規制当局、メーカー、サービスベンダの全てにとってメリットがある技術です。複数の車メーカー、複数のスマートフォンメーカーでの相互接続性が重要なため、民主的な手続きを経て仕様を決める標準化が必要でした。 開発に携わった製品は Best of CES を受賞し、その年のカーステレオ市場の旗頭になりました。 製品開発以外にも、特許申請、プロジェクトの谷間の時期を活用したアプリ開発や、中期市場計画、またソニー・エリクソン/ソニーモバイルとの協業など、幅広く活動させてもらいました。技術的にも、Linuxのデバイスドライバやハードウェア仮想化のレイヤから、GUIのレイヤまで見れたのは、メーカーならではの経験だったのではないかと思います。 製品開発にソフトウェア側から携わる中で、マーケティングや顧客接点との遠さにもどかしさを感じることが多く、それなら自分で事業を作ろうと、社内公募に参加する形で「ビジネスデザイン・イノベーションラボラトリ(BIL)」に移籍しました。 BILでは率直なところ、かなり苦労しました。 個人的に一番やりたかったのは航空機内のIn-Flight Entertainmentでした。車載製品と技術スタックの一部が似通っていて、世界トップの映画・音楽・ゲーム事業を傘下に持っているソニーであれば、かなり面白いことができるのではないか、と考えていました。 一方で、それだけ重厚な事業を立ち上げていくには正直なところ力不足だったかな、と思います。 その後、社内の協力を取り付けて事業企画を進めていく手法を勉強するため、とある先輩のプロジェクトを半年ほど手伝いました。この製品はまだ世に出ていませんが、いずれ多くのユーザーに喜ばれるものになることを確信しています。 これだけ多くの経験をしたソニーを退職する直接のきっかけは、BILが解散となることです。社内の他の部門に移籍することも考えたのですが、自分で事業を持って会社を立ち上げたい、という思いが消えず、この決断に至りました。自分はまだ20代後半で、どこかで失敗するなら早めに失敗して、そこから学びたい、という気持ち。ソニーは良い会社、完成された会社なので、失敗をしないように社員を守ってくれる仕組みがそこかしこにある。それらが全て取っ払われた環境で、自分に何ができるのか。 これから、まずは、BILで最後に持っていたプロジェクトをベースに、事業化を狙っていきます。

9月 30, 2014